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ランドセル

タイ○ーマスクの話を聞いて、リアルで施設から通っていた昔のクラスメートのことを思い出し。
ざっと打ち出してみたカンマ二次SS1本。もちろんフィクションです、念のため。


「待ちなさい」
 人気(ひとけ)のない廊下を行こうとしていた少年を追うようにして、初老の男性が慌てた様子で部屋から出てきた。
「御盾くん、これはどうしてこんなことに?」
 少年は太い眉を僅かに顰めて、その肩紐の引きちぎれたランドセルを見た。つい今し方、施設の園長でもある男性にこのランドセルを渡して謝ったばかりだった。
「……こわしてすみませんでした。いつか必ず、べんしょうします」
 同じ言葉を繰り返して頭を下げる少年に、園長は困ったように笑って言った。
「責めてるんじゃない。どうしてこんな壊れ方をしたかを聞いているんだよ」
「…………。中学生に、引っぱられました」
 園長は目を合わせようとしない少年の手足に――本人はそれとなく隠そうとしているが――新しい擦り傷や青痣が残っているのを見咎める。
「いじめられたのかい」
「いいえ」
 少年は年に不相応な難しい顔をしたまま、大きく首を横に振った。
 小学生とはいえ、発育の良い彼の背丈は園長の背を今にも追い越しそうな程だった。それがランドセルを背負って歩いていれば、わざとからかったり喧嘩を売ったりする不良学生も中にはいた。
「喧嘩したのか」
「…………」
 答えずとも、その喧嘩を仕掛けたのが彼の方なのは表情から明らかだった。
「御盾くん、どうして……約束したじゃない」
「……ごめんなさい」
「誰かがいじめられていたのかい?」
 彼が自ら好んで喧嘩をする質でないのは園長もよく把握している。だからといって大人しくされるままという事はなく、降りかかる火の粉を自分で払い除けるだけの負けん気の強さも力も持っていたし、弱い者への面倒見も良い少年だ。故に、施設にも学校にも彼を密かに頼りにする子らが多いのも知っていた。
 それで今回も、また誰かを庇っての喧嘩かと思ったのだが。
「……いいえ」
 少年はむっつりとしたまま、言葉少なに頭を振る。
「ふむ。じゃあ、君が何か言われたのか」
「…………」
「何を言われた」
「……………………」
 何か思い出したのか、ぎり、と奥歯を噛む音が園長にまで聞こえた。
「……さん……」
「え?」
「お母さんの……悪口を……言われた」

 学校帰りにすれ違った、見た顔の男子学生二人連れ。
 いつだったか、この連中にも体の大きさをからかわれて無視したことがある。向こうも不快そうにちらちらとこちらを見てはいたが、今日は何事もなく過ぎるように見えた。
 しばらく歩いたところで、学生が聞こえよがしに言うのが少年の耳まで届いた。
『でけえガキって目障りだよなー。端歩けっつうの』
『何だ、あのボロランドセル。買ってもらえなかったのかよ』
『○○園の奴だから中古使い回してんだろ』
『孤児(みなしご)かよ。でかすぎて親に捨てられたってか?』
『ちげーよ。うちの親が知ってたわ。あいつの母親、自殺したんだと』
『うえ、マジで?』
『マジマジ、霊の声が聞こえるとか言うキチガイで有名だったって――うわっ?!』
 頭で判断する前に体が動いて、その学生に体当たりしていた。

「……本当に、すみませんでした。おれが働けるようになったら、絶対、べんしょう……」
「いや……弁償とか気にしないでいい。どのみち、もう君には小さかったものな……うん」
 何を言われたかまでは言わなかったが、どんな内容であったか粗方想像が付いた園長はそれ以上聞かなかった。少年の肩を軽く叩くと、片方だけ残ったランドセルの肩紐を腕に通してやりながら微笑みかけた。
「ランドセルのことは後で担任の先生に電話して相談しておくから。ほら、もう行きなさい」
 少年は会釈するが早いか、一目散に廊下を駆けて自分の部屋へと戻っていった。
 廊下を走ってはいけない、というのは園長の口癖だったが、今だけは注意しなかった。
 少年が涙を見せまいと必死なのが分かったから。
崎守の養子になる辺りの話まで妄想が暴走しかけましたが、とりあえずこの辺で終了。
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2011-01-13 : 落書き : コメント : 2 :
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No title
太眉を顰める御盾くん…

情景が頭の中で不思議と想像できました。なんでだろう(笑)
2011-01-14 00:17 : makoto URL : 編集
Re: makoto様
> 情景が頭の中で不思議と想像できました。なんでだろう(笑)

恐らく、小さい頃は無精髭がないだけでほとんど顔形は変わってないんじゃないかと…。
2011-01-14 22:18 : SantHeim URL : 編集
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